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業態別 開業ガイド

キッチンカー開業に必要な
設備と費用相場

キッチンカー(移動販売)は、店舗型より初期費用を抑えて開業できる一方、「給水タンクの容量でメニューが制限される」「自宅で仕込みができない」「電源は自前で確保する」という車両ならではのルールがあります。この記事では、設備の要件と費用の目安を、店舗型の厨房設計の視点も交えて解説します。

店舗型との最大の違い初期費用と固定費

店舗型の飲食店は開業に平均900万円前後〜1,000万円超かかるとされるのに対し、キッチンカーは車両と設備を合わせておおよそ250〜400万円程度から開業できるのが一般的な目安です。家賃という固定費がなく、一人で運営できるため人件費も最小限に抑えられます。

費目内容目安
車両+架装軽トラベースの新車製作の場合。中古車両や自車の改造、リースなら圧縮可能約250〜300万円
厨房機器・調理設備加熱機器・冷蔵設備・タンク類など(後述)約20〜100万円
諸経費営業許可の取得費用、保険、容器・備品類など約30万円

※ 車両の種類・メニュー・新車か中古かで大きく変動します。別途、営業開始後の駐車場代・燃料費・材料費などの運転資金も数ヶ月分の確保が推奨されます。

なお車両購入費は対象外になることが多いものの、厨房設備の導入や車内改装には「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」など、国や自治体の補助金を活用できる場合があります。

最重要ルール給水タンクの容量でメニューが決まる

2021年6月の食品衛生法改正で、キッチンカーの給水・排水タンクの基準は約40L・約80L・約200Lの3区分に全国で統一されました。どの容量で許可を取るかによって、提供できるメニューの数と調理工程が変わります。ここがキッチンカー開業の最初の分かれ道です。

40L
1品目・1工程 コーヒーなどのドリンク提供や、既製品を温めて出す程度の簡易な営業向け。容器は使い捨てのみ。カフェ・ドリンク系の最小構成です。
80L(最も一般的)
数品目・2工程程度 クレープ・サンドイッチ・唐揚げなどの軽食営業に対応。容器は使い捨てのみ。開業者の過半がこの区分を選ぶとされる、実質的な標準サイズです。
200L
複数工程+車内仕込み 車内での仕込みが認められ、ラーメン・うどんなど大量の水を使うメニューも提供可能。通常の食器も使えます。その分タンクは重く(水200L=200kg)、車両サイズと積載への影響大。
タンク容量の3区分は全国共通ですが、各容量で認められるメニュー数や工程の細かい運用は自治体で差があります。また許可はメニュー・調理工程・仕込み場所・食器の使用有無を総合して判断されるため、車両の製作や購入の前に、出店地域を管轄する保健所への事前相談が必須です。作ってから「このメニューは出せない」となるのが最も高くつく失敗です。

見落としがちな壁仕込み場所は自宅NG

当日の車内調理以外の下準備(仕込み)には、食品衛生法に基づく営業許可を受けた「仕込み場所」が別途必要になる場合があります。そして自宅の台所は原則使えません。家庭用キッチンは業務用の衛生基準を満たさず、生活の場と食品を扱う場の分離が求められるためです。

主な選択肢は次のとおりです。

仕込み場所特徴
シェアキッチン・レンタルキッチン営業許可済みの施設を月額制・時間制で利用。設備を自分で揃えずに済み初期費用を抑えられる一方、都市部に集中しており地方では見つけにくいことも。
飲食店の厨房を間借り定休日や仕込み時間帯を借りる方法。営業許可の名義や責任範囲の整理が必要なため、保健所への確認を。
200L区分で車内仕込みタンクを200L区分にすれば車内での仕込みが可能に。仕込み場所の家賃が不要になる代わりに、車両側の投資が増えます。

逆に、仕込み済み食材・半製品を使う構成や、ドリンク中心の簡易メニューなら仕込み場所自体が不要になるケースもあります。メニュー設計の段階で「仕込みをどこでやるか」まで含めて組み立てるのがポイントです。

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電源の確保店舗と違い「引込」がない

店舗の厨房なら電気は引込工事で確保しますが、キッチンカーは自前で電源を持ち運ぶのが基本です。冷蔵庫・換気扇・照明・調理機器と、電気は思った以上に使います。

現地の電源を借りる
イベント会場や商業施設が有料で貸し出すコンセントを利用。機材の持ち運びが不要な反面、借りられる場所でしか営業できず、移動中の冷蔵には使えません。
発電機
燃料があれば長時間稼働できる一方、一酸化炭素が出るため車内では使えず、騒音(小型インバーター式で50〜60dB前後)と積み降ろしの手間が課題です。
ポータブル電源
静かで車内でも使え、事前充電でどこでも営業可能。大容量・高出力の機種なら冷蔵庫と調理機器の同時稼働にも対応します。ソーラー充電と組み合わせる運用も。
実際には複数の方法を組み合わせるのが定石です。現地電源が使える出店先を軸に、ポータブル電源をバックアップに持つとトラブル時のリスク分散になります。冷蔵庫は消費電力の小さいコンプレッサー式・DC12V/24V対応の機種を選ぶと電源の負担が軽くなります。

車内の厨房機器小型・省電力で構成する

車内は数センチ単位でスペースを取り合う世界です。店舗用の据置機器ではなく、卓上・小型タイプを軸に構成します。

機器ポイント価格の目安
給水・排水タンクホームセンターやネットで調達可。80L区分は20L×4個などに小分けすると補給・排水が楽数千円〜/個
シンク+手洗い設備タンク容量に応じたサイズが必要。営業許可の必須設備車両架装に含むことが多い
卓上電気フライヤーガス工事不要でキッチンカー向き。当サイト調査値:新品約6万円/中古約2.5万円約2.5〜6万円
ポータブル冷蔵庫(40L級)DC対応ならシガーソケットから給電可能約3〜8万円
業務用コールドテーブル大型車両で本格構成にする場合。中古活用で新品比30〜50%の圧縮が可能新品約15〜30万円
ポータブル電源/発電機容量・出力と静音性のバランスで選定約10〜40万円

※ 加熱機器(鉄板・焼き台・炊飯器など)はメニューにより追加。ガス機器を使う場合はLPGボンベの設置・固定方法も保健所と架装業者への確認事項になります。

開業までの流れと必要な資格

必要な資格は食品衛生責任者(1日の講習で取得可能)と、車両に対する営業許可の2つが基本です。流れとしては、①メニューとタンク区分を決める → ②保健所に事前相談 → ③車両の製作・購入 → ④営業許可申請・車両検査 → ⑤営業開始、の順になります。②の事前相談を③より先にやることが、作り直しを防ぐ最大のポイントです。8ナンバー登録など車両側の手続きが絡む場合は、構造変更検査のスケジュールも含めて逆算してください。

まとめこの記事の要点

  • 店舗型との最大の違いは初期費用と固定費。家賃がない代わりに、車両と出店料がかかる。
  • 最重要ルールは給水タンクの容量でメニューが決まること(40L/80L/200Lの3区分)。3区分は全国共通だが、認められるメニューや工程の運用は自治体で差がある。
  • 仕込み場所は自宅NG。営業許可を受けた施設が別途必要になる。見落としやすい壁。
  • 電源は引込がない。現地電源・発電機・ポータブル電源を組み合わせ、冷蔵庫は省電力の機種を選ぶ。

キッチンカーで最も高くつく失敗は、車両を作ってから「このメニューは出せない」と分かることです。許可はメニュー・調理工程・仕込み場所・食器の使用有無を総合して判断されます。製作や購入の前に、出店地域を管轄する保健所への事前相談を必ず。

この記事を書いた人

ちゅーぼーシミュレーター 運営者

業務用厨房レイアウト設計/実務10年

  • HACCPコーディネーター
  • 二級管工事施工管理技士

業務用厨房のレイアウト図作成に10年従事。ラーメン店・カフェ・居酒屋・焼肉店・キッチンカーなどの個人店舗から、セントラルキッチンや学校給食施設まで作図を担当してきました。 現在は、その実務で使っていた機器選定と設備容量の基準をデータベース化し、本サイトの診断ロジックとして公開しています。

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